綿貫佳祐 デザインポートフォリオ

矛盾を抱えて、悩み続ける

1つの正解に飛びつかず、矛盾した考えを同時に抱えて悩み続けることの価値について整理してみました。

私は、矛盾した考えを自分の中に同時に持つことを意識しています。

どちらか一方に決めず、複数の立場を抱え続ける。
それが思考を深くすると考えているからです。

1つの正解に飛びつくことへの危惧

例えば、ビジネスにおいて数字は絶対的な拠り所とされています。

数字は客観的で、比較可能で、説明しやすい。
だから多くの人が数字を判断基準にします。

しかし、これはあくまで「大多数にとって共通して分かりやすいから」数字を使っているに過ぎません。

もし全知全能の視点があったとしたら、「数字だけ見ていたら取りこぼすことも多いよ」と見えているかもしれません。
感情とか感覚とか、定性的なものも並行して捉えておく必要があると思っています。

数字に限った話ではありません。
どれか1つだけに正解を求める姿勢をとると、非常に浅はかで一面的な考えになると思っています。

効率とクオリティ

よく話に挙がる矛盾(あるいは対立関係)の一つに、効率とクオリティがあります。

効率を重視すれば、限られた時間で多くのことができます。
しかし、一つひとつの深さは犠牲になりがちです。

一方、クオリティを重視すれば、良いものはできます。
しかし、時間がかかりすぎて機会を逃すかもしれません。

私はどちらか一方を選ぶのではなく、両方を同時に追求しようとしています。

「人と同じかそれ以上の効率で、人一倍のクオリティを出す」

これを実現するために、人の何倍も普段からインプットとアウトプットを続けています。
矛盾を解消するのではなく、矛盾したまま両立させる道を探っています。

自分の前提を疑う

もう一つ、私が意識的に矛盾を抱えているのは、自分の正義についてです。

私は誠実さを重視しています。
嘘をつかない、ごまかさない、正直であることを大切にしています。

しかし、同時にこうも考えます。

「もしかしたら多少悪どい動きでも、どんどんやった方がトータルで世の中のためになるのでは?」

自分の正義が本当に正しいのか、逆の思考をぶつけて自分を疑うようにしています。

極端な例も挙げてみます。
私は将来の人間社会のためになる仕事をしたいと思っていますが、こんな思考実験もします。

「そもそも今すぐ人間を全員いなくした方が、最終的に地球のためになるんじゃないか?」

もちろん、実行するつもりは一切ありません。犯罪は論外です。

ただ、思考実験としては許容しています。
「人間社会のため」という前提自体が本当に正しいのか、そこまで遡って考えることで、自分の立場がより明確になると思っています。

負荷との向き合い方

正直に言えば、矛盾を抱え続けることは思考や感情にとって負荷がかかります。

自分でも矛盾していることが分かるので、どこか二枚舌のような態度に思えて、誠実さを欠いているように感じます。
私は誠実さを重視しているので、この負荷は特に大きいです。

しかし、この負荷は取るべきリスクだと考えています。

矛盾を抱えずに一つの正解に飛びついた方が、気持ちは楽です。
しかし、それは思考の浅さと引き換えに得る楽さです。

「今はまだ悩んでいる最中なんだ」と自分に言い聞かせることで、この負荷への折り合いをつけています。

無限に先延ばしにするわけではありません。
いつか意思決定をするタイミングが来たら、ちゃんと1つに決める。

そう決めているからこそ、今この瞬間に矛盾を抱えていることを許容できています。

100:0と51:49

私は、100:0で決断できる状況に違和感を持っています。

全会一致のパラドックスという話があります。
全員が賛成する決定は、むしろ疑ってかかるべきだという考え方です。
何か見落としがあるか、十分に議論されていない可能性がある、といった具合です。

個人の意思決定でも同じことが言えると思っています。

100:0で決められるということは、逆の立場を十分に検討していないか、あるいは人間としての意思決定ではなく単なる数値の大小比較を「意思決定のつもり」と捉えてしまっているかのどちらかではないでしょうか。

本当に考え抜いた意思決定なら、何かしらの苦しみがあります。
だから私は、そういう状態にならないために、普段から悩み続けるようにしています。

とはいえ、永遠に悩み続けるわけにはいきません。
どこかで決断しなければならない場面は来ます。

そのとき、私は矛盾を抱えたまま、51:49でどちらかを選びます。
そして、決めたらそれ以降はブラさない。

普段から悩んでいない人間の決断は軽いと思っています。
一方、悩んだ末にどちらにも決められないのも、折衷案と称してどちらの価値もない判断をするのも、かなり価値が低いです。

悩むことには意味がある。しかし、悩んだ上で決めることにも意味がある。
その両方を大切にしたいと思っています。

悩み続けることの価値

早々に答えを出してしまうと、他の可能性を検討する機会を失います。

一度「これが正解だ」と決めてしまえば、人はその正解を補強する情報ばかり集めるようになります。
逆の立場の意見は耳に入りにくくなり、自分の決定を疑う機会が減っていきます。

悩んでいる間は、複数の可能性が生きています。
Aかもしれないし、Bかもしれず、どちらの視点からも物事を見ることができます。

無闇に決断を急ぐ必要はないはずです。
悩み続ける時間そのものが、思考を深くしていると信じています。